Nena - 「99 Luftballons」

ニコニコ

邦題「ロックバルーンは99」。
ここで豆知識。日本ではもはや駅前や繁華街にはあってトーゼンとなっている娯楽施設”カラオケ”はカタカナではあるものの「空(から)オーケストラ」の略称でバリバリ日本語が混じっている現代に出来た造語。元々はバンドマン用語であったのだが驚くべきことに実は世界共通語でもありお国柄ちゃんと発音は出来なくてもKARAOKEと言えば少なくともカラオケがある国ではほとんど通じる。
何故カラオケの話をしたのかと言うと、現在では日本のカラオケマシンには邦楽だけでなくある程度の洋楽も取り揃えているが昔はビートルズなど日本人なら誰でもメロディは知っているほどの超有名な楽曲しかカラオケには入っていなかった。英語ではない曲は特にそうでありドイツ語の曲に至ってはたった2曲しか入っていなかった。

そのうちの一つがこの「ロックバルーンは99」である。
ちなみにもう一つが「ジンギスカン」である。

世界共通語であり第二国語として設定している国も多い英語の洋楽は割と世界でヒットしやすいがそうでない楽曲はなかなか火がつきにくい。そういう意味ではこの曲は大変珍しくドイツ語の歌なのに世界中で大ヒットした。しかも世界への広がり方がいささか面白い。ドイツ国内でヒットした後この曲を偶然聴いていたカルフォルニア州のラジオDJが気に入ってそこからアメリカ西海岸のラジオで火が尽き、そこから全世界へ広がったのだが、なんとそれからスイス、オーストリア、イギリス等はドイツのお隣の国なのに一度アメリカを経由をしての言ってみれば逆輸入的なヒットの仕方をしている。
もちろん”全世界ヒット”の中には日本も含まれていてリリースの翌年である1984年4月から4週連続で洋楽チャート1位に輝いている。非常に有名な曲なので歌詞の解説・和訳をしているサイトは検索すればすぐ見つかるためここで詳しくは書かないが一言で言うと「戦争をする滑稽さ、そしてその後の虚しさ」を揶揄に表現している反戦の曲。テーマは重たいが歌詞は非常に考えられているので詩的な方は和訳を眺め寓話を頭に浮かべるのも楽しいと思う。
ただやはりドイツ語は難解なのか元の歌詞ではなく英語でカバーされたものから和訳している人も多い。それでも問題はあまりないのだが英語の方は歌いやすさから歌詞が「99 red balloons(99の赤風船)」に変わっている。しかし原題は「99(99の) luft(英語で言う”Air”。空気の入った、空中に浮かんでいるという意味) balloons(風船)」。赤い風船と訳していたら英語からの訳か、はたまた訳している人の詩的センスが炸裂しているかのどちらか。後者も情景をつけさせるために大事なんですよ。

「ばせばらら」の使用理由についてはお話しの中で「水曜どうでしょう」の有名なシーンをパロディしている所があるのだがこれは北欧の国々をレンタカーで入国して回るという企画中に起こったとある事件のパロディでその事件があった場所がドイツであったことからドイツの曲を使うことに決めた。
本当は「北欧」の企画中にも紹介されたSVEN-INGVARSの「MARIE,MARIE」を流したかったのだがどうしても楽曲が手に入らなかった。かと言ってABBAを流すのも間抜けだし…ねぇ(笑)どうやら水曜どうでしょう内で流れた「MARIE,MARIE」はカバー(セルフ?)だったらしく元曲は随分と違う曲調みたいでそちらはAmazonで売っていた。……と、言っても筆者はオランダ語は全くわからないため間違えている可能性もある。ご了承の程を。
ちなみにこの回でパロディネタをやった福子の役を演じているJ-Nekoko様は北海道のご出身でこのパロディ元を勿論知っていたという逸話も併せて紹介してさせて頂きます。なんと高校の時、担任の先生が大泉洋さんの大ファンで高校をサボってイベントに行ってしまったのだとか……いや、先生がサボるなよ!と言いたいですが、それほど大人気の番組なのですね(笑)

かなりどうでもよい余談だがタモリ倶楽部内人気コーナー「空耳アワー」で滅多に贈呈されることはないことで有名な最高景品である空耳ジャンバーを獲得している曲でもある。(と、言っても贈呈アイテム選出時にタモリさんは「これ長いこと吊るしてたしあげちゃうか」と結構軽い気持ちであげていたような(笑)。)空耳部分は1番のAメロ部分で本動画では11秒付近のらいにゃの台詞の真ん中。「(そのまんま)東、多分変態よ」と言っている。英語がちょっとでもわかる人が英語の曲で空耳を探そうとしても無駄に単語や文法を知っているせいでなかなか見つけられないが、そんな人でも英語とは全く違うドイツ語ならば大丈夫。是非空耳を掴まえてみて欲しい。

アメリカで全米チャート(ビルボード)2位を獲得したこの曲だが奇しくもこの紹介文を書いている時になんとあろうことか日本人が全米チャート77位に入るという快挙のニュースが入ってきた。日本人の全米チャート入りは松田聖子さん以来26年ぶり、7人目の快挙だ。その人物とはピコ太郎さん。筆者は"きりもみ空中3回転"が大好きだったのでとても嬉しい。日本人では坂本九さんが「上を向いて歩こう」で全米1位を過去に取っているがそういえばこの「99 luft balloons」を紹介しているあるサイトでは「ドイツ語の曲で全米2位なんで簡単に言うとドイツの"上を向いて歩こう"です」と言っていました。それほど信じられない快挙なのだ。
ちなみに「上を向いて歩こう」は海外では「SUKIYAKI(すき焼き)」と言うタイトル。イギリスのレコード会社の社長が曲を大変気に入り本国でジャズカバーをしようとしたのはいいがレコードに日本語で書かれていた「上を向いて歩こう」の字が(そりゃまあ外国人だから当然)全く読めず、その社長が知っている日本語が「サヨナラ」と「すき焼き(日本に行って食べた思い出の品)」しかなく、前者では暗いという理由で後者に。全英チャート10位以内に入るヒットを見せたものの海を渡りアメリカに来たジャズ版「上を向いて歩こう」はヒットせず。しかし偶然にもとある高校生アメリカ人が日本人文通相手に送って貰ったという本物の方の「上を向いて歩こう」のレコードをワシントン州のラジオ番組DJに送りつけ番組でかけてみたら問い合わせが殺到するほどの人気に。その後アメリカでも発売されることが決まったのだが曲名が今度は「SUKIYAKA(すきやか。意味不明。SAKAMOTOのSAKAと韻を踏みたかっただけでそのタイトルにしようとしたらしい)」になりそうになったが東芝レコードの方に説得されてなんとか「SUKIYAKI」に戻したそうだ。よくやった東芝……いや、すき焼きってなんだよ、やっぱり。
「SUKIYAKI」は1962年5月から全米チャート3週連続1位、2016年現在、世界歴代シングル売上記録では1300万枚売っている。





ライナーノーツ目次へ